エドモンド(2005/08/19 19:00 青山円形劇場)

そんなわけで観て参りました。「エドモンド」本日初日です。劇場向かうまですっごいドキドキしていました。なんなんだ私。緊張しすぎ。青山円形劇場って初めてだったんですが、まずはどうやって入るかわからずまごまご。そしてエレベーターを降りたらものすごい数の花・花・花!!初日ってこともあってか花の香りがロビーに充満。その中を通ってホールの扉を開けると、その名の通り、円形状の舞台。思ったより狭い…というか舞台近っ!!もっと深くて広いと思っていました…。時間は1時間半。でもちょうどいいくらいかな。以下、初日ってことなんで。



舞台は円形状、そこに十字に通路(正確に言うと、私の席から見ると縦に通路があり、横は通路はないけど客席のわきを通って舞台に上がれるようになっている)。この舞台が非常にいい感じでした。舞台を見る、というよりは客席も含めたホール内全体が舞台で、緊張感が違うんですね。こう、張り詰めた感が非常に良く伝わってきました。
ストーリーはざっくり言うと、エドモンドという男の物語で、占い師に「あなたのいる場所はここではない」と言われたところから家を飛び出し、そのあとは見事に転落人生。騙され、ボコられ、ナイフを手に入れ、人を殺し、捕まって刑務所に入り…という。まあ、正直最初から「ストーリーがなあ…」という思いがありました。それに加えて私の苦手とする翻訳モノ。実際に見て、それは…予想通りという感じ。平凡な日常に不満を感じる男がまず女を買ってみる、でもそんなことで不満は解消されず、そこからどんどん深みにはまっていく…という感じがもうね、嫌。金、女、そして宗教。さらに「白人」「黒人」という人種的なものや、日本人らしくないセリフが入ってなおさら嫌ーな感じになってしまいました。これはもう、しょうがないんだろうけど。でも単純にいうとまったく感情移入ができなかった。だってイチバンキライなタイプなんだもんエドモンドが!!まあ、劇を見る姿勢っていうものがどういうものかによるとは思うんですが、多少なりともどこかで、感情移入して見てしまう私としては、それができないってのはちょっと困ったことになるわけで。そして主役以外の感情面は極力排除されている…となるとどうにもこうにも。
演出はすごくよかったと思います。どうしてこの劇場になったのかはわかりませんが、円形ということを最大限、とまではいわないけどかなり活かした舞台だったと思います。芝居のテンポがスピーディーだったのは円形だったことが大きい、はず。これ普通の舞台だったらもっと単調だったろうな…と思います。照明の使い方もいい感じでした。特に最後の雑居房のシーン。
で、感想としてはどうだったかというと、よかったんです。何がって八嶋さんが。えーっと、最初から最後までずっと眼鏡なし*1だったんですが!最初、舞台が明るくなったときに眼鏡がなくて正直しょんぼりしたのですが、途中から全然気にならないというか、かけなくて正解!とにかく役者・八嶋智人を堪能させていただきました。八嶋さんの舞台は2回目なのですが、以前観た「消失」のときに「ああーこの人はがっつり舞台の人だなー」って思ったのですが、まず声が違う。円形劇場ってことで当然客席も円形、つまり場面によっては完全に後姿になってしまうので、若干聞き取りにくいところもあったのですが、でも声の出し方、身体の動き、そして(私から見たら)嫌な男を完璧なまでに演じきっていたところ、いやもう、本当に素晴らしかったです。そこには普段の愛嬌ある「眼鏡王子」ではなく、役者・八嶋智人。完全に真ん中、主役としての存在感。特に最後の、女を殺したことを悔やむといった姿と、それに寄り添う教戒師の酒井さんのシーンはぐっとひきこまれました。
ちけっとぴあのHPにあったインタビューでは、八嶋さんはこう言っていました。

前までは外向にテンション放出して、脇のほうでイェイイェイ言ってるのが大好きな役者だったんですけど(笑)、もっと内向きに掘り下げるってことにも最近興味が出てきはじめていて。
そう、なんかね、振り子みたいな感じがするんですね。バラエティ番組とかだと、イェイイェイ全開なわけですよ。そっち向きに大きく振れれば振れるほど、今度は逆側にも大きく飛べそうな気がして。だから今回はエドモンドという人物の人生や時間に、どれだけ深く歩み寄っていけるかが楽しみですね。

これ、かなり半端ない掘り下げ方なんじゃないかと思いますよ。先日の27時間テレビでのイェイイェイ全開ぶりから本当に逆側に大きく飛んだんですね。舞台上でも小柄で、最初見たときはかわいらしい…なんて思っちゃったし、それでしゃがんだり体育座りすると本当にちっちゃいんですが、物語が進むにつれ増す存在感。いや、参りました。素晴らしい役者さんです。たぶんまた観にいきます。角度を変えてみることで、また気づくこともあるかもしれない。でも、とにかく今は八嶋さんをまた観たいんです。舞台の上の。

ああーだめだーもうね、本当に好きだとどう書いても足りないし、書く術もなくもどかしい気持ちになるしかないのですね。撃沈。


*1:あ!カーテンコールでは、眼鏡装着でした。ぎゃー王子!!何かのサービスかと思いました(←違