宮沢和史 MIYAZAWA-SICK 05(2005/02/25 渋谷公会堂)

きっと、神様からもらったんだ、あの声は。

「一番好きなアーティストは?」と聞かれて言う名前がときどき変わっても、「一番好きな声」は10数年変わっていません。宮沢さんの声を生で聞くのはこれで3回目なのですが、今日は一番じっくり聞けました。そして再認識。あの声は、ちょっとおかしいくらい、いい。ギターにもピアノにも、ヴァイオリンにもトランペットにも、そして三線にも合う声というのは私は他に思い浮かびません。弾き語りのバラードも、スカも、沖縄も、ブラジルも、オケも、ロックも、すべてあの声と融和する。きっと神様が与えてくれたんだと思った。そして、その声の持ち主が、その声で歌を歌うことを仕事に選び、いつでもその声を聴くことができることをとても嬉しく思います。
アンコールで「今日はなんだかフワフワしていた」という宮沢さん。それは地に足がついてないとか、浮き足立っているわけではなく、よく見えている状態でのことだと言っていて、忘れられないライブになったとも言っていました。わたしは観終わって、ぽわんと心が温かい状態です。まだぽわぽわしているので、あまりちゃんとレポできないのですが、ちょっと印象深いところだけ、以下。
シンプルなセット、というか楽器だけというセットの中、メンバーと共に登場したMIYA。白いシャツ姿。10人のメンバーはヨーロッパを回ってきて、一つのチームとしてすごく一体感を感じる。ステージ上で、なんというか、見えないドーム状の膜ができているような、それくらいの1つのものに向かっていく1つのチームに見えました。
5曲やって、一旦弾き語りタイム。「今、一番好きな曲です」とギターとトランペットで『光』を。こんな状態でやるなんて、ずるい、と思うくらい素敵な歌。舞台上に点々と灯る暖かい色の照明がまた素敵度を上げる。『光』はヨーロッパツアーでも演奏したそうで、歌詞が日本語なので現地の人たちがどんな歌かはわからなかったかもしれないと言っていたけど、十分伝わると思った。
『SPIRITEK』から本編ラストまでの3曲は、まったく感じの違う曲の流れだったのに、それが自然にすうっと入ってきた。『SPIRITEK』で大人の男女のゆったりとした色気を感じさせ、沖縄系→ブラジル系と流れていくのは、やっぱり声のせいだと思う。
そして、今回一番印象に残ったのは『島唄』。実は私にとって『島唄』は「BOOMの代表曲」という捉え方で、曲自体はもちろん「いい曲だなあ」とは思うけど、正直今まではW杯のときの取り上げられ方とか、世界各国で歌われていることとか、あまりピンとこなかった。でも、今日ゆっくり聞いて初めてこの歌の力というものを感じた。弾き語りタイムが終わり、ギターであのイントロが流れたとき、座っていた会場の人々が立ちあがる。そして何度も何度も耳にしたあのフレーズがゆっくりと始まる。鳥肌がたった。サビの部分では、メンバーに合わせて会場の人々もゆっくり掲げた両手を左右に振る。この歌の核となる部分では、涙腺が緩み、視界がゆがんだ。その、願いが、この歌を生んだのだろう。そしてこの歌は最後の「ラララ」の部分がもしかして、強大な一体感を生むのかもしれない。この歌が、世界の人々たちにも歌われていることがやっとわかった気がしました。一体今まで私は何をしていたんだ、という感もあるのですが…今日のライブで、この曲が聴けて、こんな気持ちになれたことに感謝します。ほんとに。
アンコールでは「後ろを振り返らず、前を、歩くのではなく、かけ抜けていく」ことを決めたと言った宮沢さん。あまりに真っ直ぐすぎて、これから一体どこへいってしまうのだろうと思うときもあるけど、私は遠くからその勇姿を見ていこうと決めました。これからも、ずっと。