走れメルス NODA・MAP第十回公演(2005/01/28 19:00〜)

そんなわけで、野田さんの芝居を初めて観てきました。なかなか感想、というのがまとまらないのですが…。でも、今日思ったのは、「わかる」「わからない」じゃないってこと。その2択ならば、「わかる」とは言えないのですが…でも、私の身体の、いろいろな部分をいろんなものがかすめていったのです。たくさん、たくさん。それは何かの瞬間に貫かれたような衝撃ではなくて、かすり傷の部分から、意識がそこに向き、そこから自分の持っている何かにアクセスしていくような。ああ、やっぱり上手くはいえないなあ。でも、私にとって「わかる」「わからない」の2択は意味がないことだ、ということを知ることができたということはすごく意味のあることで、それだけでも観てよかったと思いました。
芝居自体は1時間45分ということでそんなに長いものではなく、スピード感あふれるセリフと動き、展開でくるくると変化していき、ノンストップで最後まで。それまで劇評でしか知らなかったこの感じを実際に体験することができて嬉しい。役者さんもすごくって、深津絵里のあの声といい、古田新太の貫禄といい、そして最初まったく気がつかなかった小西真奈美といい、やはりテレビと舞台って違うんだなあ…と平凡すぎることを思った次第。野田芝居が初めてだった私は、笑いどころはあまりなかったのですが、吸いこまれるように、身を乗り出して観ておりました*1。セリフの言葉遊びの部分はやはりすごくて、ああ、野田さんも日本語が大好きなんだなあ…としみじみ思いました。言葉自体の音と、リズム。こういうことって努力じゃなくて持ってうまれたものなのかなあ。
内容に関してもいろいろ思うことはありました。が、言葉にならないし、この思いは観てすぐ形になるものではなく、この先、自分の生活と並走していくものだと感じているので。メルスはいない、けど、メルスは最高だと本気で思える。いないのに、最高だと思えるメルスは、確かにいる。この矛盾はでも、生きていく上で必要なことで、じゃあいったいその二律背反にどうやって落とし前をつけるのか。…そんな感じです。全然わからんね…。もうちょこっと、思いをめぐらせることにします。


*1:これ、席にも関係あるんですけどね…コクーンシートだったんで。